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布団がなかった時代、人々はどうやって眠っていたのか

公開日:2026-08-07

布団がなかった時代、人々はどうやって眠っていたのか

柔らかい布団で眠ることは当たり前ではなかった。江戸庶民は藁の上で、着物を掛けて眠っていた。

現代的な布団が庶民に普及したのは、江戸時代後期から明治にかけてのことだ。

ふかふかの敷布団に横たわり、掛布団を引き寄せて眠る。この日常の豊かさは、長い歴史の中では最近のものだ。それ以前、多くの人々は今とはまったく異なる環境で眠りについていた。

今、当たり前にあるもの

現在の日本では敷布団・掛布団・枕のセットが寝具の標準で、羽毛・ウレタン・低反発素材など多様な選択肢がある。ベッドとマットレスを使う家庭も多く、電気毛布・羽毛布団の高機能化が進んでいる。

質の高い睡眠への関心が高まり、睡眠計測アプリ・枕の高さ調整・マットレスの硬さ選びまで、眠りを科学的に最適化しようとする動きが広まっている。

それがなかった時代

江戸時代の庶民にとって、布団は贅沢品だった。

当時の長屋住まいの庶民の多くは、「藁(わら)を敷いた床に着物を掛けて眠る」のが一般的だった。藁は断熱材として機能し、布団の代わりに使われた。脱いだ着物を体にかけ、丸くなって眠る。それが当たり前の睡眠環境だった。

枕も現代とは異なり、「箱枕(はこまくら)」と呼ばれる木製・陶製の硬い台が使われた。特に女性は、髷(まげ)を崩さないために、頭だけを高い位置に乗せる形の枕を使った。柔らかいものではなく、髪型を保つための道具としての枕だ。

どう変わってきたか

布団の普及には、綿花の生産拡大が大きく関わっている。江戸時代中期以降、日本国内での綿花栽培が広まり、綿を詰めた布団が作られるようになった。しかし高価であることに変わりはなく、庶民が布団を持てるようになったのは江戸後期から明治以降だ。

明治・大正に入ると木綿布団の製造が工業化し、価格が下がった。昭和初期には一般家庭にも布団が行き渡るようになった。

現代の羽毛布団が広く普及したのは1980〜90年代で、それまで綿布団が主流だった。

「枕を高くして眠る」という表現の本当の意味

「枕を高くして眠る」は、現代語では「安心して眠る」という意味の慣用句だ。

しかしこの表現の起源は、物理的な枕の高さに由来する。

かつての箱枕は、頭を支える台であり、防犯の意味も持っていた。枕の中に貴重品を入れる「枕箱(まくらばこ)」というものがあり、貴重品を枕の下に置いて眠ることで、就寝中に盗まれないよう守ったのだ。

「枕を高くして眠れる」ということは、貴重品が安全で、危険がなく、安心できる状態を意味した。安全であるから高い枕を使える——そこから「安心」の比喩になった。

今は布団もベッドも柔らかくなり、枕の中に貴重品を入れる必要もない。言葉だけが、かつての用心深い眠りの作法を伝えている。

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