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図書館がなかった時代、本を読むにはどうすればよかったのか

公開日:2026-07-28

図書館がなかった時代、本を読むにはどうすればよかったのか

無料で本が借りられる。この当たり前の裏には「知識へのアクセスは誰にでも開かれるべき」という思想がある。

無料で本を借りられる公共図書館が日本に整備されたのは、明治時代以降のことだ。

読みたい本があれば図書館に行けばある。貸し出して家で読める。返却期限内なら何度でも読み直せる。費用はかからない。この「当たり前」の背後には、「知識へのアクセスは誰にでも等しく開かれるべきだ」という近代の思想がある。

今、当たり前にあるもの

現在の日本の公共図書館は全国に3000館以上あり、多くは市区町村が運営する。貸し出しだけでなく、館内閲覧・資料調査・レファレンスサービス(調べ物の相談)まで無料で提供される。

電子書籍の貸し出しを行う図書館も増えており、スマートフォンで図書館の蔵書を借りて読むことができる自治体もある。障害のある方向けの点字資料・音声資料の提供も図書館の重要な役割だ。

図書館の本はすべてカード・バーコード・ICタグで管理され、予約・延長もオンラインで完結する。

それがなかった時代

近代公共図書館以前、本を読む機会は個人の財力に大きく依存していた。

本は高価だった。木版印刷が普及した江戸時代でも、本は庶民にとって「買えるもの」ではなかった。書籍は武士・僧侶・商人の富裕層が所有するものだった。

「貸本屋(かしほんや)」が江戸時代の江戸や大坂に存在した。一定の料金で本を借りられる商売で、庶民が読書を楽しむための手段だった。戯作(げさく)・草双紙(くさぞうし)・浮世草子など大衆向けの読み物が流通した。貸本屋はビジネスだったため、需要のある娯楽本が中心で、学術書・専門書は扱いが少なかった。

寺院の蔵書は宗教的・学術的なものが多く、一般の人が自由に読めるものではなかった。知識へのアクセスは、生まれた階層と財力によって大きく左右された。

どう変わってきたか

日本初の近代的な図書館は1872年(明治5年)に東京に設立された「書籍館(しょじゃくかん)」で、現在の国立国会図書館の前身の一つだ。当初は閲覧のみで貸し出しはなかった。

公共図書館の貸し出しサービスが整備されていくのは大正・昭和にかけてのことで、戦後になって全国の市区町村に図書館が普及した。1950年の図書館法が、無料原則(利用料を取らないこと)を法的に定め、現代の公共図書館の基盤となった。

本を読む権利を守った図書館員たち

1960〜70年代の日本で、図書館は静かに重要な役割を果たした。

この時期、企業や政府の不正・公害・薬害などを告発する「問題図書」が数多く出版された。これらの本は内容に批判的な立場からの圧力を受けることがあり、出版社が廃版にしたり、書店が取り扱いをやめたりする事例が起きた。

日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言」(1954年採択、1979年改訂)のもと、「図書館は資料の提供を通じて市民の知る自由を守る」立場を明確にした。書店になくても、図書館にはある——この原則を守ることが、知識へのアクセスを保障することだという信念だ。

誰でも無料で本を借りられる場所は、「知識は一部の人のものではない」という社会の意思表示だ。建物があることを当たり前に感じるとき、その「当たり前」が何を支えているかを思う。

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