電池がなかった時代、それはカエルの足から始まった
公開日:2026-08-09
単三電池を入れれば動く。この当たり前の前には、カエルの解剖実験があった。
化学電池が発明されたのは、1800年のことだ。
リモコン・懐中電灯・時計・おもちゃ——電池があれば、コンセントなしにどこでも電気が使える。この「持ち歩ける電気」の始まりは、イタリアの生理学者が行ったカエルの実験にさかのぼる。
今、当たり前にあるもの
現在は単一・単二・単三・単四など規格化された乾電池に加え、充電式電池(ニッケル水素・リチウムイオン)が広く使われている。スマートフォンやノートパソコンに内蔵されたリチウムイオン電池は、充電・放電を繰り返せる二次電池だ。
電気自動車の普及で電池技術の重要性は増しており、「全固体電池」など次世代電池の開発競争が続いている。
それがなかった時代
電池が登場する前、持ち運べる電気源は存在しなかった。
電気を使うためにはその場で発電するか、静電気を蓄えたライデン瓶のような装置を使うしかなかった。ライデン瓶は電荷を一時的に蓄えられるが、持続的な電流は供給できない。
電力を「貯めて持ち歩く」という概念自体が、電池の発明で初めて実現した。
どう変わってきたか
1780年代、イタリアのルイージ・ガルヴァーニは解剖したカエルの足に異なる金属の器具が触れると、足がぴくっと動くことを発見した。彼はこれを「動物電気」と呼び、生き物の体に固有の電気があると考えた。
この実験報告を読んだ物理学者アレッサンドロ・ボルタは別の解釈をした。電気が生じたのは生き物のせいではなく、異なる金属が接触したためだと考えたのだ。
1800年、ボルタは亜鉛・銅・塩水に浸した布を積み重ねた「ボルタ電堆(でんたい)」を発明した。世界初の化学電池だ。「ボルト(V)」という電圧の単位は、ボルタの名前に由来する。
その後、乾電池(1866年)・鉛蓄電池・ニッカド電池・リチウムイオン電池と、電池の歴史は200年にわたって積み重なってきた。
カエルの足が世界を変えた
ガルヴァーニの観察から電池が生まれ、電池から電子機器が生まれ、電子機器から現代社会のほぼすべてのインフラが生まれた。
解剖台の上で動いたカエルの足が、スマートフォン・電気自動車・インターネットへとつながる連鎖を始めたとも言える。
科学の歴史でたびたびある「偶然の観察から大発見へ」の典型例だ。ガルヴァーニの解釈は間違っていたが、その間違いを正そうとしたボルタが電池を発明した。間違いもまた、正しい答えへの道の一部になる。