電話がなかった時代、遠くの人へ連絡する方法は手紙だけだった
公開日:2026-08-25
すぐ電話できる。この当たり前の前には、返事が届くまで数日待つ手紙の時代があった。
電話が発明されたのは、1876年のことだ。
スマートフォンでいつでも誰とでも話せる。この当たり前の体験は、電話が発明される前の世界——遠くの人へ連絡するには手紙を書き、返事を何日も待つしかなかった時代——とは根本的に異なる。
今、当たり前にあるもの
現在はスマートフォンで通話・メッセージ・ビデオ通話が一台でできる。LINEなどのメッセンジャーアプリで即座にやり取りでき、時差のある海外とも無料で話せる。
固定電話の普及率は下がり続け、若い世代では「電話をかける・受けることが苦手」「テキストの方が気楽」という感覚を持つ人も増えている。
それがなかった時代
電話以前、遠距離の連絡手段は「手紙」と「使者」だった。
江戸時代には「飛脚(ひきゃく)」という手紙・荷物の運搬業者がいた。最速の「継飛脚(つぎびきゃく)」は江戸〜大阪間(約500km)を3〜4日で走ったとされる。当時としては驚くべきスピードだが、それでも返事が来るまで1週間以上かかる。
急用があっても「すぐ伝える手段」がなかった。災害・事故・病気の知らせが届いたときには、すでに状況が変わっていることも多かった。
どう変わってきたか
1876年、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話の特許を取得した(ただし同日に他の発明家エリシャ・グレイも特許申請しており、誰が「発明者」かは議論がある)。
日本には1877年(明治10年)に電話が伝わり、1890年(明治23年)に東京・横浜間で最初の電話交換が始まった。当初は電話局に行き、交換手を通じて相手に繋いでもらう形式だった。
家庭への電話普及が本格化したのは戦後の1950〜60年代で、当時「電話を引く」ことは大きな出費を伴う特別なことだった。公衆電話が各所に設置され、「テレホンカード」も文化として定着した。
携帯電話(ガラケー)は1990年代に普及し、スマートフォンは2010年代に一般化した。
「すぐ連絡できる」が変えたもの
電話の登場は、時間の感覚を変えた。
手紙の時代、「返事を待つ」ことは当然で、数日の沈黙は普通だった。電話の登場後、「すぐ連絡できる」が当たり前になり、返事が遅いことへの不安が生まれた。
スマートフォンの時代には「既読スルー」「返信が遅い」という概念が生まれ、即時の応答が期待されるようになった。
技術が変わるとき、コミュニケーションの「礼儀」と「不安」のあり方も変わる。今の「既読スルー」の悩みは、電話が作り出した「すぐ連絡できる」という期待の上に生まれている。