風呂敷がなかった時代は、いつからあるのかを考える話
公開日:2026-08-30
日本が世界に誇る包み道具・風呂敷。今レジ袋削減の文脈で再評価されているこの布には、長い歴史がある。
風呂敷が庶民の生活用品として定着したのは、江戸時代のことだ。
一枚の正方形の布で、様々なものを包む・結ぶ・運ぶ。風呂敷は形がなく、用途に応じて変形する万能の道具だ。プラスチック袋・バッグ・包装紙が溢れる現代に、「脱プラ」「エコ」の文脈で再評価されている。
今、当たり前にあるもの
現在の風呂敷は伝統工芸品としての側面と、環境配慮の包み道具としての側面を持つ。百貨店・デパートでは贈り物の包みに風呂敷が使われ、布の質・柄のデザインにこだわった商品が多い。
「風呂敷バッグ」「風呂敷ラッピング」など現代のライフスタイルに合わせた使い方も広まっており、外国人にも「日本の素敵なエコバッグ」として人気だ。
「風呂」の「敷物」という名前の由来
「風呂敷」という名前は、文字通り「風呂に敷く布」に由来する。
江戸時代の銭湯(湯屋)で、客が脱いだ着物を包んだり、床に敷いて使ったりした布が「風呂敷き」と呼ばれた。銭湯での使用がそのままこの布の名前になったのだ。
しかし風呂敷の使用はもっと古く、奈良時代の「東大寺大仏開眼供養」(752年)の際に物品の包みに使われたとされる布が、風呂敷の起源の一つとも言われている。平安時代には貴族が衣類を包む「衣包(ころもつつみ)」として使われた。
どう変わってきたか
江戸時代に入り、銭湯文化の広まりとともに「風呂敷」が庶民に普及した。商家では商品・金銭の輸送・包装に、旅人は荷物のまとめに、庶民は日常の持ち運びに使った。
風呂敷の大きさ・素材(絹・木綿・化学繊維)・柄は用途・場面によって使い分けられ、高級な絹の風呂敷は贈り物・礼装の包みとして特別な意味を持った。
戦後、ビニール袋・レジ袋・バッグが普及するにつれ風呂敷の日常使用は減少したが、1990年代以降のエコロジー意識の高まりとともに再評価が始まった。
2020年代のレジ袋有料化以降、「繰り返し使える包み」としての風呂敷への関心が再び高まっている。
「形がない」という強み
バッグには形があり、それ以外のものは入らない。レジ袋には大きさの限界がある。しかし風呂敷は形がないため、スイカ一玉にも本の山積みにも対応できる。
「形がないから何にでもなれる」——これは物の設計思想として面白い。現代のソフトウェア・サービス設計でも「フレキシブルな構造」の重要性が語られるが、風呂敷はそれを布一枚で体現している。
最もシンプルな道具が、最も長く使われ続けることがある。