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電子レンジがなかった時代、温め直しはどうしていたのか

公開日:2026-07-07

電子レンジがなかった時代、温め直しはどうしていたのか

料理を数十秒で温め直せる。その当たり前の裏には、戦争中の偶然の発見があった。

電子レンジが家庭に普及したのは、1970年代以降のことだ。

料理を入れてボタンを押す。数十秒から数分で、冷えた食事が温かくなる。この速さと手軽さを、私たちはすっかり当たり前にしている。しかし電子レンジが存在しなかった時代、温め直しは別の話だった。

今、当たり前にあるもの

現在の日本では、電子レンジの普及率は95%を超える。温め直しだけでなく、解凍・調理・飲み物の加熱にも使われる。コンビニで「温めますか?」と聞かれるのも、電子レンジがあることを前提にしたサービスだ。

レトルト食品や冷凍食品の市場が拡大した背景には、電子レンジの普及がある。「封を切ってレンジで温めるだけ」という食文化は、電子レンジなしには成立しなかった。

それがなかった時代

電子レンジがない時代、冷えた料理を温め直す方法は限られていた。

鍋に移して火にかけるのが基本だ。ご飯は蒸し器で蒸し直す。スープや煮物は小鍋に移して温める。どの方法も、鍋を出し、火を使い、時間をかける必要があった。洗い物も増える。

前日の残り物を翌朝に食べるとき、わざわざ火を使って温め直すか、冷たいまま食べるかという選択が日常的にあった。「冷やご飯」「冷めた味噌汁」は、手間を省くための現実的な選択肢でもあった。

お弁当は温め直さないことが前提で、冷めても美味しく食べられるよう工夫されていた。日本の弁当文化が「冷めても美味しい料理」を発達させてきた背景には、こういった事情もある。

どう変わってきたか

日本に電子レンジが登場したのは1960年代のことだ。当初は業務用が中心で、価格は現在の感覚で数十万円を超えた。一般家庭向けに販売が始まったのは1960年代末からで、普及し始めたのは1970年代に入ってからだ。

最初は「温め直し専用」に近い使われ方だったが、やがて解凍や調理にも使われるようになった。1980年代にオーブンレンジが普及し、電子レンジが家庭料理の中核に組み込まれていった。

価格が下がり、サイズが小さくなるにつれ、ひとり暮らしの部屋にも置けるようになった。今では新生活の必需品として、冷蔵庫や炊飯器と並ぶ存在になっている。

発明は、ポケットのチョコが溶けたことから始まった

電子レンジが生まれたのは、意図しない出来事からだった。

1945年、アメリカの技術者パーシー・スペンサーは、軍事用レーダーの研究をしていた。マグネトロン(電磁波を発生させる装置)の前に立って作業していたとき、ポケットに入れていたチョコレートバーが溶けていることに気づいた。

これが電磁波の熱作用を発見した瞬間とされている。スペンサーはその後、ポップコーンや卵での実験を重ね、電磁波を使った加熱の可能性を確認した。翌1946年に特許が出願され、最初の商業用電子レンジが誕生した。

軍事レーダーの研究中に偶然溶けたチョコが、数十年後に世界中の台所を変えた。計画されていなかった発見が技術の歴史を変えることは珍しくない。電子レンジはその代表的な一例だ。

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